酵素風呂は、設備ではありません。生き物を育てているのに近いと、私たちは考えています。
スイッチを入れれば温まる装置ではなく、微生物が活動してはじめて熱が生まれます。だから、毎日状態を見て、手を入れる必要があります。
今回は、あまり語られることのない「菌床の管理」についてお話しします。
なぜ温かくなるのか
米ぬかやおがくずが温まる仕組みは、堆肥づくりと同じ原理です。
農業分野の解説では、発酵の過程がこう説明されています。
発酵(分解)が始まると、はじめに分解しやすい糖やアミノ酸、デンプンから分解が進み、タンパク質など細胞内部に存在する物質が糸状菌や好気性細菌によって分解され、その呼吸熱によって発熱が起こります
(出典:ヤンマー「土づくりのススメ|堆肥ができるまで」)
つまり熱源は、微生物が有機物を分解するときに出す呼吸熱です。電気もガスも必要ありません。
そして微生物が活動を続けるには、条件を整えてあげる必要があります。
攪拌(かくはん)が欠かせない理由
酵素風呂の管理で最も重要な作業が、毎日の攪拌です。
なぜ必要か。発酵を担うのが好気性微生物、つまり酸素を必要とする菌だからです。
堆肥化の解説資料には、こう記されています。
堆肥中の微生物に空気を送ることが重要です。いわゆる切り返し・撹拌作業です。水分調整をした生ふんを堆積しておくだけでは、表面の30cm程しか発酵しません。よって、適宜切り返しや撹拌を行って好気性発酵を進ませて均一な堆肥を作る必要があります
(出典:秋田県「堆肥化発酵の6条件」)
放置すれば、表面近くしか発酵が進まない。
酵素風呂も同じです。混ぜなければ内部に酸素が届かず、全体が均一に温まりません。お客様が入られたとき、場所によって温度がまちまち、という状態になってしまいます。
当サロンでは毎日人の手で菌床をかき混ぜ、温度と状態を確認しています。
水分と温度を見る
攪拌のほかに見ているのが、水分と温度です。
発酵には適切な水分量が必要で、多すぎても少なすぎても微生物の活動は鈍ります。季節や天候によっても変わるため、状態を見ながら調整します。
温度も毎日変わります。順調なときと、そうでないときがある。「今日は少し元気がないな」と感じる日が、実際にあります。
菌床は工業製品ではないので、同じ状態が永遠に続くことはありません。だから毎日見るのです。
約1ヶ月で、まるごと入れ替える
当サロンでは、糠の状態を見ながら約1ヶ月を目安に米ぬかをまるごと入れ替えています。
理由は2つあります。
1つ目は、素材の性質です。
当サロンが使っているのは、こめ油を取り除いていない生米ぬかです。脂質を含むため保存性が低く、酸化や酸敗が起こりやすい。だからこそ長く使い回すことができません。
2つ目は、衛生面です。
発酵と衛生の関係については、こんな研究報告があります。
適切な堆肥化により発酵温度は70℃まで上がり、大腸菌数も2週間後には検出限界以下となる
(出典:農研機構「発酵温度を70℃まで上げる適切な堆肥化により堆肥の大腸菌は未検出となる」)
※これは牛ふん堆肥に関する研究であり、酵素風呂について述べたものではありません。
ただ、発酵が適切に進んでいる状態と、そうでない状態では意味が違うということは、この研究からも読み取れます。発酵が弱まった菌床を使い続けることは、私たちはしたくありませんでした。
入れ替えは、重労働です
正直に書きますが、入れ替え作業は大変です。
コストもかかります。頻度を下げれば経費は確実に減ります。
それでも1ヶ月で切り替えているのは、酵素風呂が素肌で直接触れる温浴だからです。顔以外のほぼ全身が埋まります。何に触れているのかを、曖昧にしたくありませんでした。
お店に聞いてみてください
お客様が酵素風呂に入られるとき、目に映るのは茶色いおがくずだけです。それがいつ入れ替えられたものなのか、毎日混ぜられているのか、見ただけでは分かりません。
だからこそ、気になる方はお店に聞いてみてください。
「どのくらいの頻度で入れ替えていますか」 「毎日混ぜていますか」
答えは店舗によって違っていいと思います。大切なのは、お店が自分の管理方法を説明できるかどうかです。
当サロンは、いつでもお答えします。
参考文献
- ヤンマー「土づくりのススメ|深掘!土づくり考|堆肥ができるまで」 https://www.yanmar.com/jp/agri/agri_plus/soil/articles/03.html
- 秋田県「堆肥化発酵の6条件」 https://www.pref.akita.lg.jp/uploads/public/archive_0000001203_00/taihijyouken.pdf
- 農研機構「発酵温度を70℃まで上げる適切な堆肥化により堆肥の大腸菌は未検出となる」
https://www.naro.go.jp/project/results/laboratory/karc/2006/konarc06-27.html
