生米ぬかと脱脂米ぬか。酵素風呂で語られることの少ない、素材の違いについて

農薬不使用の生米ぬかと国産ヒノキのおがくず

酵素風呂について、お客様と話すなかでほとんど話題にらないことがあります。

「その酵素風呂で使っているのは、生米ぬかですか。それとも脱脂米ぬかですか」

この質問をいただいたことは、ほとんどありません。業界のなかでも、あまり語られていないテーマだと感じています。

けれど当サロンは、ここが酵素風呂の質を大きく左右すると考えています。今回はその話を書きます。

米ぬかの約2割は、油でできている

まず前提の話から。

文部科学省の日本食品標準成分表(八訂)増補2023年によると、米ぬか100gあたりの脂質は19.6g。つまり米ぬかは、重量のおよそ2割が脂質です。

この脂質が「こめ油(米油)」として取り出されます。スーパーで売られている米油は、まさにこの成分を搾ったものです。

そして、油を搾ったあとに残るのが「脱脂米ぬか」です。

脱脂米ぬかは、米油工場の副産物

ここからが本題です。

日本農芸化学会の学会誌『化学と生物』に掲載された論文には、こう記されています。

米糠から搾油後に副生する脱脂米糠は、原料(米糠)に対して重量ベースで80%以上に及ぶ。現在、この著量発生する脱脂米糠は、有用な上記成分を含有しているのにも関わらず、そのほとんどが収益率の低い家畜飼料、堆肥原料として用いられている

(出典:『化学と生物』「環境調和型プロセスにより脱脂米糠から回収・精製されたアレルゲンフリータンパク質及びリン化合物の機能性食品原材料としての用途開発・市場導入に関する研究」)

つまり脱脂米ぬかは、米油をつくる過程で大量に発生する副産物です。その多くは家畜飼料や堆肥に回っています。

裏を返せば、安定して手に入り、価格も抑えられるということです。

なぜ脱脂米ぬかが使われるのか

脱脂米ぬかが選ばれる理由は、はっきりしています。

扱いやすいからです。

脂質を含んだままの生米ぬかは、酸化や酸敗が起こりやすく、長期保存に向きません。精米してから時間が経つほど品質が変わっていきます。

一方、油を取り除いた脱脂米ぬかは保存性が高い。仕入れやすく、管理も楽で、価格も安定している。

これは経営判断として、まったく合理的です。 脱脂米ぬかを使う店舗を否定するつもりはまったくありません。

それでも当サロンは、生米ぬかを選んでいます

当サロンで使っているのは、こめ油を取り除いていないオーガニックの生米ぬかです。国産ヒノキのおがくずとブレンドしています。

理由はシンプルで、「より多くの栄養素を含んだ米ぬかに、お客様に包まれてほしい」と考えたからです。

ここで正直にお伝えしておきたいことがあります。

「生米ぬかの方が効果が高い」という比較研究は、確認できていません。

酵素浴という温浴法そのものが、学術的な比較検証の対象になることがほとんどありません。ですので「生の方が効く」と言い切ることはできません。

言えるのは、脂質という成分を残した状態か、取り除いた状態かという事実だけです。

その上で当サロンは、取り除かない方を選びました。食べ物と同じで、精製を重ねるほど失われるものがあると考えているからです。この判断が正しいかどうかは、最終的にはお客様が肌で感じることだと思っています。

手間の話をします

生米ぬかを選ぶということは、手間を引き受けるということです。

保存性が低いので、状態を毎日確認しなければなりません。当サロンでは毎日人の手で菌床をかき混ぜ、温度と状態を見ながら育てています。

そして、糠の状態を見ながら約1ヶ月を目安に、米ぬかをまるごと入れ替えています。

入れ替えにはコストがかかります。作業も重労働です。頻度を下げれば経費は減ります。それでも1ヶ月で切り替えているのは、「良いものを使いたい」という気持ちだけでなく、衛生面で妥協したくないからです。

酵素風呂は、素肌が直接おがくずに触れる温浴です。顔以外のほぼ全身が埋まります。だからこそ、何に触れているのかを曖昧にしたくありませんでした。

見えないところにも、こだわりを

お客様が酵素風呂に入られるとき、目に映るのは茶色いおがくずだけです。

それが生なのか脱脂なのか、いつ入れ替えられたものなのか、どんな米から取れたものなのか。見ただけでは、わかりません。

だからこそ、そこを説明できる店でありたいと思っています。

もし酵素風呂に興味を持たれた方は、ぜひお店にこう聞いてみてください。

「ここの米ぬかは、生ですか。脱脂ですか」 「どのくらいの頻度で入れ替えていますか」

どちらを使っていても構いません。大切なのは、お店が自分の使っているものを説明できるかどうかだと思うのです。

その問いが増えていけば、酵素風呂そのものの質が上がっていく。私たちはそう考えています。


参考文献

  • 文部科学省「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」食品番号01161 米ぬか
  • 日本農芸化学会『化学と生物』「環境調和型プロセスにより脱脂米糠から回収・精製されたアレルゲンフリータンパク質及びリン化合物の機能性食品原材料としての用途開発・市場導入に関する研究」